最後に、名羽線の構想から着工、工事凍結までを総括しながら、筆者の推察を挟んでいきたい。
名寄~羽幌間の鉄道は、1909年(明治42年)11月の鉄道期成大会で、北海道開拓へ早期建設が必要な18路線の一つに挙げられたのが構想の発端。22年(大正11年)4月、予定線となったが、地元からの請願や有志による現地踏査も行われたため、早くから鉄道が必要とされたことがうかがえる。
政権交代で建設予算計上、カット、復活の紆余曲折もあったが、35年(昭和10年)8月、名寄~朱鞠内間の着工が決定。名寄~初茶志内(51年7月、天塩弥生と改称)間が37年11月、初茶志内~朱鞠内間が41年10月に深名線として開業。羽幌~築別間は羽幌線、築別~曙~築別炭砿間は羽幌炭砿鉄道として41年12月に開業した。
朱鞠内では、雨竜ダム(朱鞠内湖)の建設工事が38年6月から着手。資材運搬のため、名寄側からも鉄道建設が急がれていた。ダムは43年10月完成。深名線とともに日本人や朝鮮人のタコ部屋労働があった。
羽幌町内では、羽幌炭砿の築別炭砿が40年2月、上羽幌坑が47年8月、羽幌本坑(三毛別)が48年8月に開坑し、名羽線は石炭輸送をメインとした産業開発路線の位置付けになったと考察される。
残る朱鞠内~曙間は戦時中、敷設運動が中断したが、戦後再開し、52年(昭和27年)3月、名羽線全通促進期成会が結成。57年4月に調査線、59年11月に建設線、61年4月に着工が決定。鉄道建設審議会長や衆議院議長、自民党新線建設同盟会長を務めた益谷秀次との人脈や政治力が大きかったと思われる。
62年4月から曙側で着工。62年12月に曙~三毛別間が完成し、非営業線として石炭と名羽線工事資材の輸送を開始。66年7月から朱鞠内側でも着工した。
だが、築別炭砿が断層による出炭量低下や坑内状況悪化の影響で70年6月に休山。羽幌本坑と上羽幌坑に集約したが、石油へのエネルギー転換も影響し、70年11月、羽幌炭砿が閉山。70年12月には羽幌炭砿鉄道も廃止された。
石炭輸送の目的は消え、名羽線建設の意義が薄れた一方で工事は続行。新たな役割として、羽幌港の拡張整備と並行した道北内陸部との物流ルート、天売島・焼尻島と朱鞠内湖を結ぶ観光ルートの構築、沿線の農林業開発に期待をかけた。
しかし、農業を営むには豪雪、酷寒で厳しい気候だったため相次いで離農。林業はトラック輸送に切り替わっていた。物流や観光ルートも互いの結び付きはそれほど強くなかったという。
建設工事は予算配分が抑制されたことや、豪雪地帯で施工可能な時期が限られたため、進捗は遅れた。最終的には80年(昭和55年)の全線開業が予定されたが、国鉄財政悪化もあり、79年度のローカル線建設予算は凍結。80年12月の国鉄再建法施行に伴い、幌加内町・羽幌町境界の苫竜トンネル付近など未着工部分を残し、工事は凍結。総工費は78億円が投入された。
曙~羽幌間は鉄建公団としての工事実施計画は認可されず、着工した朱鞠内~曙間も含め未成に終わった。もし曙~羽幌間も着工となった場合、羽幌炭砿鉄道の路盤を転用することになったと考えられる。
87年3月に羽幌線、95年(平成7年)9月には深名線も廃止された。
羽幌炭砿閉山や離農によって沿線人口は大きく減少。鉄建公団では、沿線自治体が第3セクターで開業する意向を示せば工事を再開するとしていたが、もし3セクで全線開業したとしても推定輸送密度は200人とされ、損益を含め営業実績は芳しくなかったと推測される。
◇
ここまで名羽線について紹介してきましたが、実際に列車が走ることはなかったため、詳しくは知らない方が多いかと思います。
史実や軌跡を伝えることができれば―と今回の連載となりましたが、未着工区間もあるため謎が多く、明確な資料もあまり残っていないことから、原稿執筆で難航するところもありました。
もし全線開業していたら、列車運行をはじめ、人や物の流れがどのようになっていたのか、気になるところです。
時代の波にも翻弄され、40年以上前に工事が打ち切られたため、既に忘れられた存在になりつつありますが、記録を将来へ残すことが重要と考えています。
写真提供と原稿執筆でアドバイスいただいた深町ただしさんに感謝し、お礼申し上げます。連載にお付き合いいただき、ありがとうございました。
(終)
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