稚内市~中川町の全長78㌔、待望の送電線が完成 北海道北部風力送電㈱ 厳粛に竣工式
発電事業者など民間資本により、2018年から北海道北部風力送電㈱が建設を進めてきた「風力発電のための送電網整備の実証事業」の送電施設がこのほど完成。4月12日から営業運転を開始したことを受け、16日に豊富町民センターで竣工式を挙行。風力発電事業者や自治体関係者、作業に当たった工事関係者ら約150人が出席し、風力発電事業最大の課題だった脆弱な送電網の課題をクリアし、脱炭素社会を目指すために欠かせない送電施設の待望の稼働開始を祝った。
かねてより風力発電の適地とされ、資源エネルギー庁から「特定風力集中整備地域」に指定されつつも、脆弱な送電網が発電の規模拡大の障害となっていたが、同庁の補助事業「風力発電のための送電網整備の実証事業」として、北海道電力ネットワークの送電線と並行する形で、稚内市から中川町の変電所まで全長約78㌔の送電線を整備。受電する北電が示した出力変動緩和条件に応じるため、720MWhという国内最大、世界的にも最大級という蓄電池が豊富町に設置された。総事業費は1050億円。
新たな送電線で電力を送る風力発電事業者や、地元の金融機関、地権者らが出資して送電会社を設立するのは外に例が無く、国内で4例ほど検討されたが実現したのは今回の1例のみ。送電網の懸念が払拭されたことで、発電事業者は風力発電施設の規模を順次拡大。最終的には540MWの発電所と連系する予定で、現在、北海道内全ての風力発電で発電される出力に匹敵するが、北電の受電施設容量に合わせ、300MWに調整して発・送電が行われる。 式典を前に工藤広稚内市長は「送電そのものもそうだが、拡大する風力発電により稚内港も資材搬入などで賑わい、まちに対する貢献度は大きい。発送電ともに更なる拡大、発展を遂げてくれれば」と期待を寄せ、河田誠一豊富町長も「道北の小さなまちに、世界最大級の施設が出来るとは感無量。町も3月に脱炭素宣言した。これからもクリーンエネルギーの街として進めていきたい」と意気込み今後訪れるであろう視察など人の受入れにも意欲を見せた。 豊富町民センターで神事を行ったあと、バスで完成した北豊富変電所へ移動。同社の吉村知己代表取締役社長をはじめ、諏訪部哲也㈱ユーラスエナジーホールディングス代表取締役社長、貸谷伊知郎豊田通商㈱取締役社長をはじめとする関係者13人でテープカット。 式典を終えた吉村社長は「緊張と嬉しさが混ざった心境。風力発電のポテンシャルを活かすキーとして送電に当たりたい」と話したほか、脱炭素社会に貢献する決意を語った。
(金子栄次)
Web掲載日2023年5月22日
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