夢破れた全線開業~旧国鉄美幸線の軌跡 特別編 不安と疑念(後編)3セク化賛成わずか 「政治路線」という見方も
全線開業のため、美幸線敷設促進期成会(会長・西尾六七=道議会議員)は第3セクター化を検討してきたが、美深町民の間では期成会の甘い試算に対し、赤字運営を心配する声が聞かれるようになった。
1984年(昭和59年)10月6日付の名寄新聞の企画記事「瀬戸際の美幸線」で「町民の疑念」として紹介されており、「第3セクター、道に要請しても予算が付くはずない。何としても全線開通を―という美深町民はあまりいない。宗谷線の方が重大問題だ」。
商業青年は「建前では3セク促進だが、沿線に経済基盤を確立する将来図がない。美幸線ができても、この町が生き残れるわけでなく、転換交付金はもっと有効な使い道があるのでは。それより美深駅の無人化反対が重要」。市街地の町民は「森林は伐採してしまい、水産物はトラック輸送ではどこに資源開発があるのか。簡単に3セク化と言うが、後の世代の赤字が怖い」と批判した。
こういった疑念は強まり、84年11月17日、「美幸線第3セクターを考える美深・歌登・枝幸町民の会」(会長・斎藤政久=歌登町議会副議長)が発足。期成会の試算を検討した結果(1)つじつま合わせに終始し、裏付け根拠に乏しい(2)内容が住民に非公開で、知る権利が保障されてない(3)除雪対策が欠如し、運行面で問題がある(4)地域交通網がマイカー、バスへ変化している中での対応が不明確(5)国の公共交通政策が確立されていない現況で、その維持を自治体が行うには無理がある―などと問題点を指摘した。
設立総会で斎藤は「3セク計画が今まで住民に説明されなかったのはおかしい。期成会の試案は道や旭川鉄道管理局の試算と食い違い、不安だ」と挨拶。出席者からは「マイカー利用者が増えており、美幸線が全通しても利用客が増えるのか」「将来、沿線人口が48%増になるというが、その根拠は」などの他、人件費を低く見積もっていることへの疑問、路盤やトンネルなどの老朽化への危惧の声が相次いだ。

美深地区労が行った調査でも、3セク化賛成はわずかで、多くの住民が冷めた目で見ていた。
道の諮問機関「運輸交通審議会」国鉄地方交通線検討小委員会でも、3セクは経営見通しが不安定で、自治体の財政負担を懸念。鉄道に比べ運行経費が少ないバス輸送が適当として、84年12月7日、バス転換を答申。道は3セク会社への出資を見送った。
期成会は85年(昭和60年)1月14日、3町のみで3セク会社設立の検討を始めたが、道の出資がないと鉄道運営は認可されないことが分かり、85年3月28日の第5回特定地方交通線対策協議会で鉄道存続と3セク化を断念し、バス転換を受け入れ。85年9月17日、美幸線は廃止された。
70年頃にさかのぼるが、森口誠之著「鉄道未成線を歩く 国鉄編」では「建設の根拠が薄弱な点は否めず、美幸線を『政治路線』とみなす冷ややかな見方が地元でも広がる。歌登町大曲地区や志美宇丹地区では鉄建公団の用地買収に難色を示す農家も出てくる」とあり、一枚岩ではなかったことがうかがえる。
歌登町史第1巻でも「志美宇丹から大曲隧道までの用地測量も実施されたが、全て順調に経過したわけではなく、特に用地問題は難航する部分も多かった」と記されている。
こういった経緯から、期成会が収支などの調査結果を住民や議会に公表せず、3町理事者で一方的に3セクの検討を進めるとともに、その内容や地元負担の説明が十分になされなかったため、住民の間に不信感が募り、是非の議論もできず、合意形成ができなかったこと。さらに巨額の赤字予測が明らかとなり、全線開業、3セク化への支持が得られなかったと推察される。
今となっては「もし全通しても利用が少なければ大赤字となり、いずれ廃止されただろう」「工事費は無駄になったが、多大な地元負担が生じる3セクにしないでよかった」と冷静に語る人もいる。
(敬称略)

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