クラシックルート開拓も 名寄スキーの歴史・文化を探る 名寄市立大学保健福祉学部教養教育部・准教授 清水幸子
名寄新聞社編集部 間所
清水さんは京都府の生まれ。幼少期は関西で育ち、父親の影響で3歳からスキーを開始。「小さなころからよく家族でスキー場を訪れていた」と語る。
清水さんはスキー技術を磨きたく、新潟県上越市の上越教育大学大学院へ進学。
上越市は、日本でのスキー発祥の地とされている。1911年1月、オーストリア・ハンガリー帝国の軍人テオドール・エドラー・フォン・レルヒ少佐が、上越市でスキーの指導を行ったことが日本でのスキーの起源。その後、1912年2月、レルヒ中佐が旭川を訪れ、北海道にスキーを伝播。その翌年には名寄を訪れ、スキーが伝播されたという。
学生時代は、日本スキー発祥の目の前（金谷山スキー場）に住んでいたとのこと。「そこはスキーのルーツを知るための場所のように感じた。そして今、名寄にいることがスキーの歴史の場所を私は巡っていると気付かされた」という。
また、スポーツバイオメカニクスの研究室に所属し、スキーのバイオメカニクスの研究に打ち込むとともに、スキー技術選にも挑戦。全日本スキー連盟のスキー指導員資格を、受験できる年齢である当時の最年少となる23歳で取得した。（2018年から受験年齢が21歳からに変更されている）
前職の長野県信州豊南短期大学では、生涯スポーツ実践や運動あそびなどを担当。2021年9月、名寄市立大学の教員として着任。スポーツ理論などで教鞭をとる。
「名寄を訪れたことは、日本スキーのルーツに乗っていると感じた。名寄はスキー板の製造が盛んだったことでも知られる。また、古くからスキー倶楽部があったことなど、名寄にはスキーの歴史、文化がある。けれどもあまり知られていないのが実情」と話す。
このような現状を受け、名寄のスキーの歴史や、市内に存在したスキー場の調査を行いたいと一念発起。
「スキー場の跡地を実際に訪れてみて、現在でも滑走できそうなところもあるし、全く跡形もないところもある。まずは、今どのような状態にあって、どのように活用されているのかを調査したい」と、調査は当時を知る市民や、古い文献なども参考にしながら行っているという。
「例えば、古い地図にスキー場という名称で記載されていても、そこにはもともとジャンプ台しかなかったという場所も存在する。スキー場と書いてあると、私たちはスキーができるものと思ってしまう。そういった今の認識とのずれや違いなども調査していければ」と目を輝かせる。
また、「スキー場という名称だと、スキーしかできなかったのかという誤った歴史を残したくない。今のピヤシリスキー場であれば、スキー場の名所である他、スノーボードやテレマーク、スロープ（ジャンプ台）なども含め、総合的ににぎわいのあるスキー場であるなど。そういった言葉を添えて残すことで、いろんな種目を楽しめた場所であると、次の世代が歴史を振り返ったときに気付いてくれると思う」と熱意。
名寄のスキー場は現在、ピヤシリスキー場と風連スキー場の2カ所のみだが、かつては九度山を使った宮様コースや、7線スロープというクラシックルート、山スキールートなども残されている。
「ゆくゆくは、かつて利用されていたコースの開拓、そしてできればもう一度復刻ルートとして残すことができればと思う。新たなスキー場やコースを作るというよりも、クラシックルートを復活させるといった活動につながればいいと思う。それは、名寄の文化を知る上でも大事なことだと思っている」と強調する。
スキーやスノーボードをただ滑って楽しむのではなく、名寄の100年を超えるスキーの歴史を広くアピールしたり、クラシックルートを実際に滑走できるようにするといった取り組みが、他とは異なる名寄独自の魅力にもなりえる。
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