【名寄市】
名寄市西13南7（豊栄通り沿い）の家庭文庫「つぐみ文庫」が、6日から本年度の開館（毎週月曜日午後2時～5時）をスタート。コロナ禍もあり、本年度は3年ぶりに例年通りの初夏から年末までの開館となり、子どもたちが絵本に親しんでいる。
家庭文庫は、全ての子どもたちに本の楽しさを―と自宅の本棚を地域に向けて開放する活動で、「くまのプーさん」「うさこちゃん」などの翻訳でも知られる作家の石井桃子さんが、現在のように整備されていなかった子どもの読書環境を憂い、1958年、自宅に児童図書館「かつら文庫」を開設したことが発端とされる。
65年、この活動をまとめた岩波新書「子どもの図書館」が発刊。全国の母親たちに刺激を与え、草の根の文化活動として全国に広まった。70年代後半から80年代前半にかけて開設件数が全国で4400件を超え、ピークを迎えたが、生活の多様化や少子化、運営者の高齢化などに伴い、件数は減少した。
名寄市内にも「栄町文庫」「みどり文庫」「智恵文文庫」などがあったが、現在は活動を休止している。
「つぐみ文庫」は87年10月、市呂寿子さんが自宅横の別棟に開設。子育てが一段落し、絵本の楽しさや素晴らしさを広く知らせたい―と運営を始めた。「つぐみ」は娘の名前に由来する。
自宅の校区となっていた豊西小学校の児童を中心に、地域の家庭文庫として親しまれていたが、子どもの生活変化や少子化などで利用が減少し、2012年ごろに定期開館を休止。町内会活動のクリスマス会や風連地区の高齢者施設での読み聞かせを軸に読書推進活動を続けていた。
16年3月末の豊西小閉校もあり、17年末の閉館を決断し、蔵書の整理を始め、一部を名寄市立総合病院小児科などへ寄贈していたところ、名寄市立大学が市民と連携する授業「地域との協働Ⅱ＆Ⅲ」で、社会保育学科の堀川真教授によるグループが文庫活動の聞き取り、子どもの読書環境調査のため、市呂さんに出会ったことがきっかけとなり、17年10月から学生主体で「つぐみ文庫」が再開となった。
市呂さんは文庫再開を喜んでいたが、直前に逝去。夫の博幸さんの厚意で継続しており、例年、初夏から年末までの毎週月曜日に開館していたが、20年度はコロナ感染拡大防止のため休館、21年度は不定期の短期開館となっていた。
本年度は例年通りの開館となり、堀川教授は「コロナ感染拡大は予断を許さないが、子どもに関わる社会生活の在り方で広く問題意識を共有しているところで、注意を払いながら日常を取り戻すお手伝いをしていきたい」と語る。
「つぐみ文庫」の広さは10畳ほどで、蔵書は約3千冊。運営は全学科共通の「地域との協働」の授業を選択している2、3年生10人が当たっている。
さまざまなジャンルや趣向、各国の民話など、絵本や児童書が本棚にびっしりと並んでおり、手に取って見ることができるとともに、貸し出しにも対応している。
さらに、工作と絵描きも楽しむことができ、学生による学習支援（宿題など）に加え、今後はお楽しみ会も予定している。
開館は12月末までの毎週月曜日午後2時から5時までだが、祝日は休館。不定期の休館もある。
詳細の問い合わせは、堀川教授（080-6062-0937）へ。
名寄新聞6月12日付掲載 Web掲載日6月20日
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