「ギャシュリークラムのちびっ子たち」
エドワード・ゴーリー 柴田 元幸 訳(河出書房新社 2000年)
「Aはエイミー かいだんおちた」、「Bはベイジル くまにやられた」…『ギャシュリークラムのちびっ子たち』はアルファベットに合わせて子どもたちが理不尽に死んでいく絵本である。
ゴーリーの絵本作品のなかでは『不幸な子供』と並ぶ代表作である。(奇しくもどちらの作品も不憫な子どもが描かれている)
作者のエドワード・ゴーリー(1925~2000)はアメリカの絵本作家だ。狂気を感じるほどの精緻な壁の模様の描きこみや、独特な登場人物(?)の造形、ウィットに富んだ言葉選びによって紡ぎだされた文章が最大の魅力である。その作風は亡くなって20年以上経った今日でも多くの読者を集めている。(誤解なきように申し上げておくと、ゴーリー自身は極めて誠実で作品作りに真摯な人であった。また無類の猫好きである。)『ギャシュリークラム』に話を戻す。
子どもたちは何か悪いことをしたわけでもなく、そして彼らの死を悲しむ誰かが他のページに登場するわけでもない。子どもたちの生と死はたった1ページの中で完結している。
フィクションの中の理由なき死を「理不尽でかわいそう」だと思うのは不思議なことではない。だが、それにとどまらないのがこの本の魅力であると思う。むしろ読者はわずかな情報のみを与えられることで多くの想像、思索へと導かれる。
例えば、1ページこっきりしか登場しない子供たちの悲惨な死を見るのはどこかおぞましいニュースを見聞きすることに似ている。メディアに触れる私たちとの関係について一考するのも良いだろう。
あるいは倫理も理不尽も飛び越えているからこそ覗き込むことのできるものがあるかもしれない。難しいなど考えずに流れるような詩句に身を任せてみても良いかもしれない。内容は決して万人が喜ぶものではないが、シンプルだからこそ読み手によってどこまでも想像と思索が深まる一冊である。
書き手 上村麻里恵
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