大韓航空機撃墜事件から40年 育英館大学・但田教授が人道的取り組みに触れる 公開講座で平和への思い語る
育英館大学では25日、同大学で公開講座を開催。但田勝義教授が「平和を考える 国境の街稚内~大韓航空機撃墜事故から40年を迎えて」をテーマに講義。年月の経過と共に、当時の惨劇を知る人は少なくなる一方。国際的な緊張が広がる現代や、40年前に人道的な活動を繰り広げた稚内市民の行動と苦悩、平和への願いを新聞記事と、発生から9年後に発行された「稚高新聞」の特集を基に、遺族や当時の浜森辰雄市長、市民の思いなどを読み解いた。
日本国内、世界を震撼させた大韓航空機撃墜事件。1983年9月1日、ニューヨークからアンカレッジを経由してソウルに向かっていた大韓航空007便が航路を逸脱。ソ連の領空を侵犯したとして、ソ連防空軍の戦闘機のミサイルで攻撃され、サハリン州モネロン島の沖合に墜落。乗員・乗客合わせて日本人28人を含む269人全員が死亡。大きな国際的事件となった。
講座には、市内小中学校の教員や市教委職員、一般市民など15人が参加。但田教授はまず「9月1日は何の日か知っていますか」と投げかけ「今となっては市民の中に何の日か分からない人もいる」と事件の風化を危惧。当時の新聞記事から但田教授は「最初は正確な情報が無い中で、浜森市長は腹をくくり犠牲者遺族に寄り添うことを決心。広範囲で遺体が海岸に打ち寄せられ、声問の浜にテント設営、市内の体育館を遺体安置所としての開設へ準備。民間フェリー会社が、遺族が現場に向かう許可を得るために奔走した」と官民で犠牲者や遺族のために汗を流したとした。
このほか、86年には稚内市が子育て平和都市を宣言。〝子育て〟の言葉が稚内発祥であること。今では全市的ま活動の折り鶴が当時の稚内中学校生徒会が始め、その後全校の取組みとなったこと。この事件で、長男夫婦を失った故・岡井仁子さんが声問の海岸で迎え火や最北野焼き・慰霊の火祭り、平和祈念の灯などを続け、現在も平和への意思を伝える行事に取り組んでいることに触れた。但田教授は「人道的な活動に取り組むことが出来たのは、国境のまちという思いが強かったからでは」とまとめた。 参加した稚内南中教頭の松本ちひろさんは「子ども達が平和について考える取組みは大切。折り鶴の制作と合わせ平和学習を進めたい」と述べた。
(梅津眞二)
Web掲載日2023年7月31日
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