「日日是好日」
森下 典子(新潮文庫 2008年)
私事となるが、大学3年生から茶道研究会に在籍している。きっかけは母校の恩師と母のすすめだ。それから、「お茶を習ってみようと思います」とバイト先で映画と本が好きな方にお伝えすると、「日日是好日をぜひ読んでみてください」とおっしゃられた。それがこの本を読んだきっかけである。ひょんなことから母の知り合い「武田先生」のところにお茶を習いに行くことになった著者こと「典子」。お茶を始めた大学生時代から社会人へと、彼女がお茶の教室に通い続けた25年の道のりを追うエッセイのような形式の作品である。
稽古の日々やお茶の師である「武田先生」との会話、著者自身の人生の分岐点が作者の身体感覚の変化、そして作者自身の気づきとともに描かれる。ふと気づいたときにそこにお茶の中で吸い上げた感覚や所作が身体から自然に出る様子は文字を追っているだけなのに目が覚めるようだ。
著者であり、この物語の主人公である森下さんはとても素直な人だと思う。
彼女の率直で忌憚のない心の声は、するりと読み手の頭へと入り込む。そして彼女が物事に対し心が大きく動いた時にこそ自身の深い感動をこちらへと伝えるのである。さて茶道研究会に入部した私の方だが、大学在学の途中から在籍を始めたこともあり、茶道研究会は経験者が多いとはいえほとんどは後輩だ。しかし未経験の私は教えてもらうことの方が多く、稽古の度に自分の未熟さを痛感するばかりである。うまくいかないことも多いが、この本は茶道を通じて知る教養だけでなく、茶道が内包する自然や身体の深みについて伝えてくれた。できないことで落ち込むのではなく、茶道だからこそ味わえる身体の感覚を楽しむことへと気持ちが切り替わる。これからも精進していこう、と思うことができる大切な1冊だ。
書き手 上村麻里恵
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