「樽とタタン」
中島 京子(新潮社 2018年)
ファンタジーではない、だがどこか不思議な雰囲気を纏った小説だ。学校帰りにとある喫茶店に預けられる少女。彼女の居場所はカウンター横の大きな樽だった。少女はいつしか常連から「タタン」と名付けられる。喫茶店には様々なお客(?)が訪れ、幼い彼女はそこで様々な出来事に遭遇するのだ。ストーリーは、お客を通じて経験するエピソードを大人になったタタンが思い起こす形をとっている。思い出のなかの物語はどこか夢の中の出来事のように飛躍していたり、現実とのギャップが潜んでいたりする。常連も、そうでない客も一捻りある人物ばかりだ。しかしどこか雰囲気に落ち着きがあり、つかみどころのない感じがこの小説に一言では言い表せない魅力を纏わせている。お店に預けられた少年が語る「お父さん」のこと、未来からきた女、ヘッドフォンをつけた内気な学生など、彼ら一人一人の物語や彼ら自身の言葉には夢うつつのようだが、その言葉には確かな彼らの信念や執着が存在する。タタンをはじめとしたこの物語の登場人物が真実かどうかなんてわからないし、すべてが再現されているわけではない。だが彼らに触れて生まれたなんらかの言葉や所感は少女の頃から変わらずタタンの中に在り続けた。この物語に(そもそも物語にこんな問いは野暮だが)「本当?嘘?」と訊く必要はなく、夢や想像、あるいは遠い思い出が蒔いた種から芽吹き、紡がれた物語は素朴な味わいで、どこか愛おしい。
書き手 上村麻里恵
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