「うたたね」
川内 倫子 撮影(リトル・モア 2001年)
淡い青と白、カーテンと思しきベージュを背景に手で握ったスプーンにはこんもりと白いタピオカがのっている。
小粒でつるんとしているその様は美しい石のようにも、生き物の卵のようにも見える。『うたたね』の表紙を飾る1枚だ。ページをめくっていくと、エサを求めて口を開けるおびただしい数の鯉、絶命して床に落ちたスズメバチ、飛び立つカモメたちや泣いている赤ん坊など様々な被写体が納まっている。
生きているものと死んだもの、気味悪さを孕むものと心地よさを感じるものが、入れ替わり立ち替わりファインダーに写る。「うたたね」の写真を見ていると、誰しも生きていれば生死を当たり前に目にすると思い至る。
道を歩けば、路傍に鮮やかな花と干からびたミミズの死骸がある。スーパーで買い物をしている人々は会話を楽しみながらも死んだ肉や魚、穀類を見つめている…。そんなふうに生きたものと死んだものを私たちは毎日のように見ていると自覚する。
川内は時としてぞくっとするような生き物や物体が持つ生と死のありさまを、うたた寝の時に見た夢を思い出すように注意深く拾い上げていく。8月は盛夏と晩夏を併せ持つ。盛りをつけていた花は枯れ、昆虫は次世代の可能性を遺して死んでいく。人もまた祭りに明け暮れる一方、お盆には死者の魂をおもう。そんな8月に川内倫子の写真に触れて見てはいかがだろうか。
なお、川内は『うたたね』と同時に『花火』、『花子』という写真集も出版している。今回紹介できなかった2冊も併せて楽しんでほしい。今回紹介した写真集はラボにて販売中。美術書、作品集の販売・買い取りはお任せください。
書き手:上村 麻里恵
今回紹介した写真集はラボにて販売中。美術書、作品集の販売・買い取りはお任せください。 (電話番号:011-374-1034 HP:BOOK LAB. powered by BASE)
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