「木の酒」造りへの挑戦 〜日本最北のビール工場から~ 第4話
醸造酒「ビール」
木の酒なのにビールのお話です。こんにちは。今回は醸造酒のうち、麦から作るお酒、ビールについてお話ししていきます。
ビールと聞いてまず思い浮かぶのはジョッキに注がれたキンキンに冷えた一杯。アサヒのスーパードライ、サッポロの赤星、キリンの一番搾りなど、大手が作るあの黄金色の液体のことではないでしょうか。
クラフトビールという言葉もあらゆる場所で聞かれるようになりましたから、ご存知の方もいるかもしれません。それぞれの会社が小さな工場で思い思いの作り方をしたビールも世の中に増えており、様々な果実を使ったものや、松の枝や葉っぱ、果てはコオロギを使ったビールなど、多種多様な材料が用いられて、世界各地でビールが、いま、この瞬間も作られています。
少しビールの歴史について見てみましょう。衛生環境が整っていなかった中世ヨーロッパでは、水を飲むよりビールを飲む方が安全だったと言われています。ビール造りには煮沸工程があり、香りと味のために使われるホップには殺菌・抗菌作用、そして炭酸ガスを逃さないための密閉構造が製造後の雑菌の混入も防ぎます。当時の水道水は、ただ川から水を引いただけのものだったため、ビールの方が余程安全な飲み物でした。その後、水道の整備が進んでからもビールの消費量が落ちることはなく、衛生面からだけでなく嗜好品としての地位を確立していきました(もちろん中世でもビールは嗜好品でしたが)。
このグローバル化した現代において、私たちは飲みたいビールを世界中の商品棚から選ぶことができます。様々なビールが飲めるこの恵まれた環境にあって、どんなビールが飲みたいか、と考えるとき、味わいは一つの指標でしかないことに思い当たります。いつ、どんな場所で、誰と飲むか。そういったビールの周辺環境が味わいに与える影響は無視できません。あの店でマスターの朗らかな講釈を聞きながら飲むクラフトビールはなんでかおいしく感じるとか、子供の頃よく遊んだ公園で夜中に散歩がてら友人と開ける缶ビールはなんとも言えずおいしかったりとか、むしろ、ビールの周辺環境というより、私たちの喜びや悲しみを引き起こす周辺環境の一つとして、ビールの方が私たちの生活の周辺にあるのだと、そんな当たり前のことに気が付きます。人々の生活は多様であり、そこで育まれる嗜好・感覚も多様です。様々な人の、様々な嗜好、様々な背景、あらゆる人の周辺環境にぴったり合ったビールを、私一人で作ることはできません。しかし、世界には無数の醸造家がいて、それぞれの思い描くビールを形にするべく、日々奮闘しています。作り手の想いから発して、いつか、どこかで、誰かの感覚に調和する。そんなビールの自由な姿こそ、私の理想とするビールであり、世界中で新しいビールが作られている、今、この状況こそ、私が理想の只中にいるということなのかもしれません。
大手のビールには大手のビールの、クラフトビールにはクラフトビールの良さがあり、それぞれの価値をうまく生活に合わせながら過ごしていくことが、快適なビールとの付き合い方であるように思います。
今回までは醸造酒についてお話ししてきました。次回は醸造酒を蒸留して作られる蒸留酒について話ししていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(株式会社美深白樺ブルワリー・名寄新聞社通信員・野崎知真) 株式会社 美深白樺ブルワリー 関連記事はこちら
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