日本最北のビール工場から~美深白樺ブルワリー 第2話
ビール造りの工程「仕込み作業」
こんにちは。美深白樺ブルワリーの野崎です。今回は早速、私たちの仕事の根幹である「ビール造り」についてお話ししていきます。
みなさん、ビールと聞いて何を思い浮かべますか?私の脳裏に浮かぶのは、居酒屋でジョッキに注がれた、美しい黄金色の液体です。では、なぜビールはああいう色をしていると思いますか?
その答えは原料にあります。ビールは主に麦芽を原料としていますが、麦芽をそのまま水に浸してもビールにはなりません。ビールに限らず、全てのお酒は微生物が糖分をアルコールと二酸化炭素に変換することで造られます。つまりお酒ができるためには必ず糖分が必要であり、この場合は麦芽にある糖分を使うことになるのですが、では麦芽に微生物を振りかければいいのか?というとそうもいかないのです。麦の中にはデンプンという物質があり、それを糖分へと変換する必要があります。この工程を「糖化」と呼びます。
この糖化工程では、麦芽に含まれる「酵素」という存在の力を借りるため、彼らが働きやすい温度のお湯に麦を浸ける必要があります。この時に煮出された麦の色素が、あのビールの美しい色の土台となるのです。
ここまではビール造りの「糖化」と呼ばれる作業です。ここで麦芽から糖分が煮出された液体、「麦汁」が完成し、次の段階へ移行します。
ホップ、という名前を聞いたことがありますか?スーパーなどに行くと、大手のビール会社の説明書きに「〇〇産ホップ使用!」などと書いてあるのを見かけるかもしれません。ホップはビールの苦味と香りを担う植物で、先ほど煮出した麦汁にこのホップを入れて沸騰することで、ホップが持つ苦みや香りを麦汁に移しつつ、麦汁内の無駄なタンパク質を固めて分離させます。この工程を「煮沸」と言います。この煮沸工程、麦汁を沸騰させ続けなければならないため、蒸気で工場中が蒸されて、とんでもない暑さと湿気になります。めちゃめちゃ暑いです。仕込み中の社長のメガネは水蒸気ですごいことになっています。
煮沸工程では、タンクの中で沸騰する麦汁が泡立ち、タンクの外に漏れだしてくる場合があるため、液が落ち着くまで麦汁の様子を見ておかなければなりません。覗き込む穴が斜め上に空いているので、そこから麦汁を観察しつつ、泡立ってきたらかき混ぜて落ち着かせるのですが、この時間だけはどうしても蒸気を浴び続けなければならず、なかなかしんどい時間です。サウナの蒸気噴射口からずっと動けないようなものです。
さて、1時間ほどあるサウナタイム、もとい煮沸行程を終えたら、分離したタンパク質をタンクの中央に寄せるため、麦汁に渦を発生させます。この工程が「ワールプール」と呼ばれるもので、この後に発酵タンクへの移送を行い、タンパク質などの不要な物質をできるだけ取り除いた麦汁にビール用の酵母を入れ、一定の温度に保ちます。いかがでしたか?ここまでが美深の工場で行われているビール仕込みの大まかな流れです。
さて、ここまでで私が意図的に省いた工程があります。それは忘れられがちでありながら、多くの酒造りにおいてものすごく重要度の高い工程、その名も「洗浄」です。
お酒は微生物の力を借りて作られるため、力を借りたい微生物と、そうでない微生物がいます。
我々の目には見えない微生物。一体どうやって、借りたい力だけを借りるのでしょう?それは「環境を整える」ということに尽きます。普段の生活でも、あの人の力はここで活きるだろうな、とか、あの人はこういう場面だと力が発揮できないよな、とか、そういうマネージメントスキルが必要とされる場面があると思いますが、その見方を微生物にも応用します。
基本的には、工場内のすべての場所を綺麗にしておく、ということが基本のキになります。その上で、実際に仕込みに使うタンクなどについては、仕込みが終わったら、できる場所は中性洗剤でこすり洗いをし、その日のうちに酸性やアルカリ性の洗剤を高温のお湯で回して洗浄。仕込みの前日には同じように配管全体に殺菌剤を回し、雑菌が混入しないように最新の注意を払って環境を整えます。
こうやって他の菌のいない環境を作った上で、働いてほしい酵母を発酵タンクに投入し、酵母が元気でいられるよう、自動制御でビールの温度を一定に保ちます。これによってやっと、ビールの
味を計算して造ることができるようになります。
私たちのブルワリーではこのような手順でビールを造っていますが、世界には様々な造り方をしている人たちがいて、例えば「ランビック」と呼ばれるビールは麦汁を容器に入れて一晩外気に晒し、降ってきた酵母(自然界を浮遊している酵母)を使って発酵させます。ここまで読んでいただいた方からすると「本当にそれでビールが…?」と思われるかもしれませんが、その造り方こそビールの原型に最も近いものではないかともいわれています。濃厚な酸味と複雑な味わいのする面白いビールです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。今回でビールの発酵が始まりましたので、次回は発酵の経過を観察しながら進めていきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。
(株式会社美深白樺ブルワリー・名寄新聞社通信員・野崎知真) 株式会社 美深白樺ブルワリー 関連記事はこちら
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