日本最北のビール工場から~美深白樺ブルワリー 第3話
「発酵」と「貯酒」期間について
こんにちは。今回もブルワリーで行われる仕込み作業についてお話ししていきたいと思います。
前回はビールの仕込みと洗浄を行ったので、今回は、発酵タンクに仕込んだ麦汁がビールになるまでの「発酵」期間と、それを出荷できる状態にするまでの「貯酒」と呼ばれる期間について見ていきます。
前回の工程では、麦芽を煮出すことで糖分の含まれた麦汁を作り、煮沸工程にて不要な物質を分離させつつ、ホップを投入しました。その液体を発酵タンクに移送するのですが、この麦汁は煮沸が行われていたために100度近い温度となっており、この中に酵母を投入すればたちまち彼らは死んでしまいます。そのため、熱交換機を使って約20度まで麦汁の温度を下げつつ、タンクへと移送します。冷やしながら移送された麦汁に酵母を投入します。ここからついに発酵タイムの始まりです。
私たちは乾燥させたビール用の酵母を購入して使っていて、普段は冷蔵庫で保管しているのですが、袋から酵母を取り出し、麦汁と同じ温度のお湯に入れてかき混ぜ、水温に慣れさせてからタンクに投入しています。昔、夏祭りですくった金魚を袋に入れて持ち帰って、すぐに水槽に入れようとしたら父親に止められ、「急に違う温度の水槽に入れると金魚がびっくりするから、慣れさせてから入れるんだよ」と言われたことがありました。酵母も同じように、冷蔵庫からいきなりタンクに放り込むのではなく、環境に慣れさせてから投入することで、麦汁の中で早く力を発揮できるようにしています。
酵母を投入したタンク内の麦汁は、酵母が活動することによって生まれる熱により、徐々に温度が上がっていきます。私たちのブルワリーの発酵タンクの場合は、発酵熱によって麦汁が設定温度を上回ると、タンクの周りに冷水が送り込まれ冷却される仕組みになっています。設定温度より下まで冷やされると冷水の供給は止まり、また少しして発酵熱によってタンクの温度が上がると冷水が回り…という風に、温度をできるだけ一定に保つよう管理しています。チラーと呼ばれる温度管理機を使って自動制御を行っているのですが、たまに圧力異常などで止まっていることがあり、「なんか工場が静かだな~」と思っていると、やばい冷却水が回ってない!みたいなことがあり、非常に焦ります。かといって24時間監視し続けることもできないので、異常が起きないよう管理しつつ、工場に入るたびに確認を怠らないことが重要です。
さて、酵母を投入したことで、ビール造りの主役を微生物にバトンタッチしました。私たちは裏方に回り、温度管理をしながら、サンプルをとってビールの状態を毎日確認します。
タンクに付いている小さな蛇口から麦汁を取り、液体の比重とphを測ります。比重は、麦汁内の糖分が酵母によって分解されることで軽くなっていくため、比重の変化を見ることで発酵の進み具合を確認することができます。また、phが急激に変化している場合は何かよくないことが起きている疑いがあるため、そちらも日々確認します。
私たちは「エール」というスタイルのビールを作っているので、一週間弱で発酵は終わります。サンプルを取り、目標とした比重に近いところまで下がったことを確認して、設定温度を5度程度まで下げ、酵母の活動を終了させます。ここからは「貯酒」と呼ばれる期間になりますが、このタイミングでドライホップという工程を行う場合もあります。発酵の終わったタンクにホップを投入することで、苦味をあまり加えないようにしながら香りづけをすることができます。
また、タンクの底に沈殿しているホップかすなどの不要な物質を取る「おり引き」という作業もあり、これによってタンク内を綺麗なビールだけの状態に近づけていきます。ここでできるだけしっかりとおりを取っておくことで、綺麗なビールを樽詰めすることができます。
ブルワリーに入ってすぐ、社長が緑の液体の入った小さなコップを持ってきて「飲んでみな」と手渡され、口にした瞬間ものすごい苦味に悶絶したのですが、それはこのおり引きで取れたホップかすでした。私の歪んだ顔を見て、社長は満足そうに持ち場へと戻っていきました。
今回もお付き合いいただきありがとうございました。次回は、貯酒を終えたビールをタンクから樽に詰め、瓶ビールを作って出荷したりという、ビールが皆さんに届くまでの過程を見ていきたいと思います。
それではまた。どうぞよろしくお願いします。
(株式会社美深白樺ブルワリー・名寄新聞社通信員・野崎知真) 株式会社 美深白樺ブルワリー 関連記事はこちら
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