「木の酒」造りへの挑戦 〜日本最北のビール工場から~ 第2話
日本酒について
こんにちは。今回は醸造酒のうち、私たちの住む国の名前を冠したお酒、「日本酒」について少しお話しできればと思います。
皆さん、日本酒を飲んだことはありますか?
居酒屋などへ行って、「冷酒 1合」とメニューに記載されているのを見たことがあるでしょうか。こだわりのある店へ行けば、「どこどこの純米」とか「純米大吟醸」とか書いてあったりもしますね。こういうものはみんな日本酒です。戦時中にある小説家が居酒屋に入ったところ、壁に紙が貼ってあり、汚い字で「ウイスケ」と書いてあった。こりゃ珍しい、こんなところでウイスキーが飲めるのかと思って一杯頼み、口をつけたら何が何だかわからない珍妙な酒で、おい、なんだこれは、と声をかけると、アラあんた字が読めないのかい、最初っからウイスケと書いてるじゃないかと言われたと、確かそんな話がありました。寄り道しましたが、いまの居酒屋でそういうシャレをする店はないでしょうから、メニュー表はだいたい合っていて、みなさんが日本酒と思って飲んだものはみな日本酒だと思っていただいて構わない、そんなことが言いたかったのです。
私の初めてのお酒は、元旦の初詣でもらった御神酒でした。早朝の澄んだ空気の中で行列に並び、寒い手をこすりながら短いお参りを済ませた後、父と母、祖母に促されて、細やかな意匠の施された金色のやかんから注がれるとろりとした液体を小皿で受けて、口に入れた時の衝撃。柔らかく甘い舌触り、それをキュッと飲み干すと、液体が口の中を通っていく道筋が熱くなるのがわかる。なんて、なんて美味いんだ!周りの目も気にせず、小皿を舐めずにはいられませんでした。
それから毎年、初詣に行くのが楽しみで、正月が終わるとすぐに来年の正月が楽しみになる。一年中、正月を待ち遠しく思って暮らしていました。
さて、この御神酒というのも日本酒で、詳しく言えば「清酒」という区分のお酒になります。
清酒とは澄んだお酒の事で、濁ったお酒という意味の「濁酒」という区分もあり、そちらはどぶろくと呼ばれて親しまれてきました。どぶろくは古くからそれぞれの家庭で自家用に作られていましたが、明治時代に酒税法ができたことであらゆる自家醸造が禁止され、日本では現在でも届け出のない酒造りは禁止されています。
日本酒をめぐる法律にも色々な話があるのですが、ポイントとして、日本酒造りの業界には、明治時代に政府が税金をしっかり取り、既存の酒蔵を保護していくために課した厳しい法律がある、という事だけお伝えしておきます。また、そういった規z制の中でも日本酒造りには様々な改良が加えられ、バラエティ豊かな今の日本酒へと繋がっています。
私が初めて社員として勤めた地元の酒屋では、日本酒からワインから焼酎から泡盛からラムからウイスキーから、ありとあらゆるお酒を揃えて販売していました。その地域には他にもいくつか酒屋があったそうなのですが、戦後、まだ日本各地が焼け野原だった頃、売上を増やすため、少量しか出回らない酒を水増しして卸す酒屋が多かった中で、その酒屋の初代は仕入れたものをそのまま、水増しせずに卸していたそうです。卸し先の店主にはその違いが分かりますから、自然と店々の信頼を得て、厳しい時代を生き延びたのだ、そういう話を酒屋の3代目から伺ったことがあります。
その酒屋では新しいお酒が届くと朝イチ全員で集まって味見をしておく習慣があり、そのほとんどが日本酒でした。お客さんに試飲してもらうことのできない場合、ぴったり来るものを勧めるためには、お客さんの表現の意図を汲んで相手のイメージする味を勧める必要があります。「甘い」「辛い」と言った表現にも、実は色々な種類があり、それを的確に捉えて勧めるには、まず私たちが味を知り、他の人がそのお酒をどう表現をするのかを知らなければならない、そのための味見でした。
色々なものを味見していく中で、よく居酒屋で飲むような「日本酒らしい」ものだけではなく、フルーツを思わせる華やかな香りや、爽やかな甘み、濃厚な甘酸っぱさを持つもの、水のようにさっぱりしたものなど、一口に日本酒と言っても様々な味わいがあることに気が付きました。また、社長に付いて酒蔵を尋ねたことで、その味わいは、酒蔵の人々が試行錯誤を重ねて作ってきた苦労の結晶なのだということも身に染みて感じました。
そうやって日本酒を知っていくと、「うまいか、まずいか」「好きか、嫌いか」という評価だけで終わらせるのが勿体無いようなお酒がどんどん出て来ます。文字通り、多種多様な酒の、その「味わい」を知っていくことで、自分の中に豊かな世界が広がるような気がしています。
いかがでしたでしょうか。いくらか日本酒に興味を持っていただけたでしょうか?
最後に私の好きな酒蔵を2つご紹介させていただいて、今回の稿を終わりにしたいと思います。
豊かな世界がある、と言われても、どんな世界かわからなければなかなか踏み出しづらいですよね。酒屋時代にオススメして多くのお客さんにも楽しんでいただけたのは、長野の「大信州」という酒蔵さんがつくるお酒でした。こちらのスタンダードな「超辛口純米吟醸」はキリッとした
飲み口と旨みが同居しているバランスのとれた逸品で、季節限定で発売される「別囲い純米吟醸番外品生」というラインナップも素晴らしく、入荷すると社長に頼んで一升瓶を2本取り置きしてもらい、お正月に家族で1本飲み、さらにもう1本は2月ごろから1人でゆっくり飲み、無くなると来年を待ち詫びながら過ごすという…振り返ると、私の1年の過ごし方は小さい頃からあまり変わっていないかもしれません。
もう一つは、滋賀県の「岡村本家」さん。こちらの「長寿金亀 白」のジューシーな甘さと旨みにはビックリしました。多くの日本酒はお米の周りを削って中心の部分を使うのですが、岡村本家さんはその削る量を少なくしたお酒もつくっていて、これもそのシリーズのうちの一つです。お米を削れば削るほど、雑味のない、スッキリした味わいになりやすいのですが、こちらは普段削られてしまうところを敢えて残し、柔らかな旨みに仕上げています。
便利な時代ですから、もし気になった方はネットで探してみてくださいね。次回は別の醸造酒を取り上げます。それではまた!
(株式会社美深白樺ブルワリー・名寄新聞社通信員・野崎知真) 株式会社 美深白樺ブルワリー 関連記事はこちら
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