「木の酒」造りへの挑戦 〜日本最北のビール工場から~ 第3話
醸造酒について ワイン
こんにちは。今回は醸造酒のうち、ワインについてお話ししていきます。
今回も私の個人的な思い出から始めさせていただくのですが、以前働いていた酒屋にはワインセラーがありまして、そのセラーではワイン担当の方が選んだ様々なワインたちが所狭しと並び、手に取ってくれる人を待っていました。温度は一定に管理され、直射日光の入らないように仕切られたその空間は、20歳の私にはどこか遠くの異郷のような場所に思えたことを覚えています。
朝イチの日本酒の味見とは別に、仕事が終わった後、ワインの試飲もさせてもらっていました。
担当の方が選んだものをいくつか味見させてもらいながら、これはこう感じる、どう感じるという話をして、それにはこんな理由がある(ぶどうの種類や熟成年数などの違いがある)ということを丁寧に教えてもらい、少しずつワインの面白さを知っていきました。
そうやっていくつか飲んでいるうちにわかってくるのは、「このワインはどんな可能性を秘めていて、それはいつ開花するか」という、いわばスポーツ選手をスカウトするような視点をワインに向けることができるということです。
ワインの色合いや香りなどをその場で優劣をつけるような飲み方はしないで、むしろそのワインがどんなポテンシャルを持っているのかを知り、あとどれくらい寝かせればいいのかをイメージする、そういう時間との共同作業が私にはとても面白く、魅力的に思えました。
一番いいもの、世間での評価が高いもの、そういうワインを飲もうと思えば相当な金額が必要になります。もちろんそれは美味しいですし、いいものですが、そこまで値の張らないワインでも、ぶどうのポテンシャルを最大限に引き出された一本と出会うことができた時、私は感動します。テニスの錦織圭選手のコーチをしていたことでも知られるマイケル・チャンさんの「自分がなり得る最高の選手になる」という言葉が好きで、目指し甲斐のある、いい目標だなぁと思っています。そして、そこに至る過程は決して平坦ではない。「世界一の選手になる!」という目標より少ない努力でいいなんて、そんなことはとっても抽き出せない、厳しい言葉だと思います。その言葉を胸にワインを飲むと、全力を抽き出すためにこのワインの周りで行われた様々な作業に想いを馳せて、すごいものを飲んでいるな、という想いに満たされるのです…。
さて、ワインのポテンシャルや熟成具合を自分の感覚でわかるようになるには時間がかかりますが、まずはおいしいワインを飲みたいと思うのが一般的な感覚だと思います。そんな時、お値段の張る店に行った時に、イベント的にワインと付き合うことも一つの方法だと思いますが、もしどこかで、よい注ぎ手に出会うことができたら、それはものすごく幸運なことだろうと思います。
では、よい注ぎ手とは誰でしょう?それは、ワインの魅力を、自分なりの仕方で表現しようと努めている人です。言葉による説明でも、佇まいでも、店作りでもいい、注ぐワインに敬意を払っている人はかなりの確率で、初心者である我々を、彼らの素晴らしい体験のうちに引き込んでくれるものです。その人たちは仕事で仕方なくワインを敬っているわけではなく、尊敬せざるを得ないワインと、その生産者に出会い、その感動を素直に私たちに伝えてくれます。
私の場合は、大人になってから通うようになった、近所の大好きなケーキ屋さんがあって、そこで月に一回開かれていたワインを飲む夕べの会で素敵な注ぎ手と出会い、そこで友人になった人たちの家に招かれると、彼らの多くもまた、よい注ぎ手でした。
最近、友人がワイン中心の小さな酒屋を営み始めまして、イタリアワインを一本と、同じ生産者が作るビールを注文しました。久しぶりに日中の温度が30度を超えた日に、自室でそのイタリアから届いたビールを開けて原稿に取り掛かりました。どう書けばワインの面白さ、楽しさが伝わるだろう。頭が沸騰しそうになって瓶ビールを手にとると、そこには「UN GIOCO DA RAGAZZI」(ままごと)と一言。ワイン造りを本業にする彼らが「ままごと」と称してビールをつくる。生産者たちの自由に楽しむ姿勢が、私がワインの液体と、その周辺に感じている面白さなんじゃないかしら、などと思いながらなんのまとまりもない原稿を書き継いできてしまいました。「私に書き得る最高の原稿」を書くには、まだまだ修行が足りないようです。
ここまでお読みいただきありがとうございました。それでは次回、ビールの回でお会いしましょう。
(株式会社美深白樺ブルワリー・名寄新聞社通信員・野崎知真) 株式会社 美深白樺ブルワリー 関連記事はこちら
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